小麦アレルギーの方やグルテンフリーをしている方には、代わりの穀物として大麦を検討している方も多いでしょう。
しかし、実は大麦は小麦アレルギーの人にアレルギーをもたらす可能性があるのです。
また、大麦はグルテンフリーとされていない食品です。
今回は大麦がグルテンフリーではない理由やアレルギーが起こる理由について説明します。

tokinoya
この記事の監修者
2005年から臨床検査技師として、健診センター、中核病院などに勤務、臨床検査科長や経営推進課の責任者を務めた。 自身がアトピーに子供のころから悩まされていたことから、グルテンフリーや無農薬、添加物に対して論文を読み漁る。現在は酵素風呂などの健康事業を手掛ける経営者。
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大麦はグルテンフリーではない

大麦は小麦グルテンが含まれていませんが、日本ではグルテンフリー食材とは認められていません。
ヨーロッパやアメリカなどではセリアック病というグルテン不耐症の患者が一定数存在し、グルテン食材の基準が厳しくなっているため、グルテンフリーではないとされているからです。
日本でも海外のセリアック病患者を基準として考えると、グルテンフリーではないとされています。
大麦を食べる際の注意点について
- 小麦と大麦のたんぱく質は構造が似ている
- 小麦アレルギーの人はアレルギー反応が起こる可能性がある
- 大麦のグルテン含有量
- 「グルテンが入っていない=小麦アレルギーでも食べられる」ではない
以上の4点で解説します。
小麦と大麦のたんぱく質は構造が似ている
小麦と大麦はたんぱく質の構造が似ている点で注意が必要です。
グルテンとは、小麦粉に含まれるたんぱく質である「グリアジン」と「グルテニン」そして水が結び付いて形成される物質です。
大麦の場合、主要なたんぱく質は「グルテリン」と「ホルデイン」で、これらは粉にしてこねてもグルテンはほとんど形成されません。
しかし、大麦に含まれるたんぱく質の一部に小麦のたんぱく質に似た分子構造が存在します。
そのため、小麦アレルギーの方は注意が必要なのです。
小麦アレルギーの人はアレルギー反応が起こる可能性がある
大麦には小麦グルテンが含まれていませんが、小麦アレルギーの反応が起こる可能性があります。
大麦と小麦では含まれるたんぱく質が異なりますが、たんぱく質の構造が似ているからです。
このように似ている構造の物質でアレルギー反応が起こってしまうことを「交差抗原性」と言います。

交差抗原性には個人差があり、同じ小麦アレルギーの人でも大麦を食べてもなんの反応も起こらない人もいれば、症状が出てしまう人もいます。
大麦のグルテン含有量
大麦にはグルテンは含まれていません。
大麦と小麦は全く違う穀物だからです。
大麦は小麦よりも繊維が多く、カルシウムや鉄分・ビタミンB1を含みますがグルテンはほとんど含んでいません。
麦ごはんや醤油・味噌・ビールなどに使われています。
グルテンが含まれていないので、大麦だけでパンを焼いても膨らみません。
>>グルテンフリーでビールは絶対ダメ?の記事も参考にしてください。

ビールには麦芽が使われており、小麦アレルギーの場合は飲むのは避けた方が無難です。
「グルテンが入っていない=小麦アレルギーでも食べられる」ではない
グルテンが入っていない食品でも、小麦アレルギーの方は食べられない可能性があります。
それはグルテンと小麦アレルギーの人が摂取できない物質が異なっているからです。
小麦アレルギーはグルテンでアレルギーが起こるわけではなく、グリアジン、グルテニンなど小麦に含まれるたんぱく質によってアレルギー反応が起こります。
表でまとめるとこのようになります。
状態 | 含まれる物質 | グルテンの有無 | 小麦 アレルギー |
---|---|---|---|
小麦 | グリアジン、グルテニンがたんぱく質として含有(グルテンは作られていない) | 無 | × |
小麦粉を水・塩と混ぜこねた状態 | グリアジン、グルテニンと水からグルテンが作られる | 有 | × |
大麦 | グルテリンとホルデインがたんぱく質として含有(グルテンはない) ※たんぱく質の一部が小麦のたんぱく質と構造が似ている | 無 | △ |
つまり、大麦はグルテンを含んでいませんが、小麦と似たたんぱく質の構造を持っているため、小麦のアレルギー反応は一定の確率で起きてしまうのです。
大麦を使っている食品
大麦を使用している食品を表でまとめました。
麦の種類 | 二条大麦 | 六条大麦 | はだか麦 |
---|---|---|---|
形状 | 粒が大きい | 粒が小さい | 丸い形状 |
加工食品 | ビール 麦焼酎 | 麦茶 押し麦 | 麦味噌 麦飯 |
普段食べたり飲んだりしているものの中にも大麦を使った食品は多くあります。
大麦はグルテンフリー?についてQ&A

大麦とグルテンフリーの関係やもち麦などの他の穀物について
- 大麦はグルテンフリーですか?
- 大麦は体に悪い?
- もち麦・押し麦にグルテンは入ってる?
- もち麦のアレルギー症状とは?
以上の4点について説明します。
大麦はグルテンフリーですか?
結論から言うと、大麦はグルテンフリーではありません
海外ではグルテン食材と位置づけられており、国立研究開発法人である農研機構でも「グルテンフリー食材ではない」としています。
しかし、大麦は粉にして水や塩と一緒にこねても小麦粉のように粘り気が出てくることはなく、小麦グルテン自体は全く含まれていません。
そのため、ゆるグルテンフリーとして小麦グルテンを減らしている人にとっては活用しても良い食材です。
大麦は体に悪い?
大麦は適量を食べていれば体に悪影響を及ぼすことはありません。

むしろ、体に良い食材として積極的に摂ることをおすすめします。
大麦は、日本人に不足しがちな食物繊維を多く含んでいるからです。
大麦には水溶性の食物繊維である「β-グルカン」が含まれています。
β-グルカンは機能性表示食品として以下の機能が認可されています。
- 健康な腸機能の維持
- 食後血糖値の上昇の抑制
- 血中コレステロール値の低下
食物繊維は摂りすぎるとおなかがゆるくなってしまうため、50〜100グラム程度を白米に混ぜて摂るのがおすすめです。
大麦は水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維をバランスよく含んでおり、その含有量は白米の17倍にもなります。
また、ビタミンB1や鉄分も含まれており、栄養が豊富な穀物です。
参考:大麦とその効用|はくばく公式サイト
もち麦、押し麦にグルテンは入ってる?
もち麦、押し麦にもグルテンは入っていません。
もち麦も押し麦も、もともとは大麦だからです。
もち麦とはもち性の大麦のことです。もち米の大麦バージョンと考えると分かりやすいかと思います。
押し麦は大麦の外皮を取り除いた後に蒸し、ローラーなどで平らにしたものです。
これらは大麦の一種であるため、通常の大麦と同様にグルテンを含みません。
参考:農林水産省「もち麦にはどのような特徴がありますか。」
もち麦のアレルギー症状とは?
もち麦は大麦の一種であるため、交差抗原性により小麦アレルギーの症状が出る場合があります。
小麦アレルギー患者が交差抗原性により大麦でアレルギー症状が出る確率は20%程度と言われています。
小麦アレルギーの症状としては、じんましん、下痢、腹痛、呼吸困難などがあります。
もち麦に関しても、小麦アレルギーがある人は専門医への確認が必要です。
まとめ
大麦はグルテンを含まない食品ですが、小麦アレルギーの症状が起こってしまう可能性はあります。
グルテンを含まなくてもアレルギー反応は起こる可能性があることに注意しましょう。
大麦はグルテンフリー食材と定義されていませんが、ゆるグルテンフリーを行っている人にとっては、活用しても大丈夫な食材です。
小麦を食べない分、不足する栄養を十分に補給できる食材のため、小麦の代替穀物として活用するのがおすすめです。